【交通事故による後遺障害】上肢の変形障害

今回は,交通事故による上肢の変形障害について検討したいと思います。

自賠責保険における後遺障害等級認定基準における上肢の変形障害は,「偽関節を残すもの」と,「長管骨に癒合不全を残したもの」とされています。

偽関節とは

偽関節・癒合不全の意義

偽関節(仮関節)とは,一般に骨折等による骨片間の癒合機転が止まって,異常可動を示す状態をいうところ,認定基準上はこれを癒合不全と表現して,長管骨の保持性や支持性への影響の程度に応じて,後遺障害等級認定がなされることとされています。

この点,癒合不全については,長管骨(上肢であれば,上腕骨・橈骨・尺骨)に生じたものについてのみ認定対象となり,その他の骨に癒合不全を残しても,自賠責保険における後遺障害等級の認定対象とはなりません。

この点,硬性補装具を必要とするものについては運動障害として評価されますので,変形障害として評価されるのは,偽関節が長管骨に生じた場合に限定されます。

そして,長管骨の中でも,生じた場所が骨幹部等(骨幹部端及び骨幹部)か,骨端部かで認定上の扱いが異なります。

検査方法

癒合不全は,レントゲン写真にて判断するのですが,1面のみのレントゲン写真では骨折面が影になってしまうことにより癒合不全が骨癒合に見えることがあるため,できる限り複数方向からレントゲン写真を撮影をすることが望まれます。

上肢の変形障害の後遺障害等級

早見表

7級9号1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの
8級8号1上肢に偽関節を残すもの
12級8号長管骨に変形を残すもの

1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの(別表第二7級9号)

次の,いずれかに該当するもの。

①上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので,かつ常に硬性補装具を必要とするもの。

②橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので,かつ常に硬性補装具を必要とするもの。

1上肢に偽関節を残すもの(別表第二8級8号)

次のいずれかに該当するもの。

①上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので,常に硬性補装具を必要としないもの(損傷自体は,第2項①と同じ)。

②橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので,常に硬性補装具を必要としないもの(損傷自体は,第2項②と同じ)。

③橈骨及び尺骨のいずれか一方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので,時々硬性補装具を必要とするもの。

長管骨に変形を残すもの(別表第二12級8号)

次のいずれかに該当するもの。なお,同一の長管骨に複数の変形障害を残しても12級8号のみの認定となります。

①上腕骨又は橈骨及び尺骨の両方に変形を残し,外部から見てわかる程度以上のもの。

具体的には,15度以上屈曲して不正癒合したものがこれに当たります。

なお,橈骨又は尺骨のいずれか一方のみの変形の場合は,その程度が著しい場合には,これに該当するとされます。

②上腕骨,橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの。

③橈骨及び尺骨の骨幹部に癒合不全を残すもので,硬性補装具を必要としないもの。

④上腕骨,橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの。

回内・回外を改善するために尺骨の遠位端を切除する手術法としてダラー法がありますが,かかる手術による切除の場合にも骨端部のほとんどを欠損したものに該当するとされます。

⑤上腕骨(骨端部を除く)の直径が3分の2以下に,又は橈骨もしくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が2分の1以下に減少したもの。

⑥レントゲン写真により上腕骨骨折部に回旋変形癒合が明らかに認められ,かつ上腕骨が50度以上の外旋変形癒合しているもので肩関節の内旋が50度を超えて可動できないか,又は内旋変形癒合しているもので肩関節の外旋が10度を超えて可動できないこと。

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