【交通事故による後遺障害】嚥下障害・味覚障害

交通事故の際に口に衝撃を受け,嚥下障害・味覚障害が生じることがあります。
この場合の嚥下障害・味覚障害は,損害賠償上どのような後遺障害等級認定がなされるのでしょうか。

以下,嚥下障害・味覚障害の順にみていきましょう。

嚥下障害

嚥下の定義

嚥下とは,口腔内の物体を胃に送り込む一連の運搬動作をいいます。

嚥下障害の内容

嚥下障害とは,前項の嚥下動作の障害により食べ物や飲み物を,うまく飲み込む事ができない状態になったことをいいます。

交通事故による嚥下障害の原因としては,器質的な原因(食道損傷等),機能的な原因(脳損傷等),心理的な原因などが考えられます。

嚥下障害は,人間の基本的な欲求である飲食に対する障害であり,耐え難い苦痛といえるものの,嚥下障害が起こるほどの重大障害を負う場合,通常他の目立つ障害が併せて発生していることが多く,見過ごされることが多い障害といえます。

嚥下障害の後遺障害等級

嚥下障害については,早見表に定めがないため,政令別表第二備考6を適用し,その障害の程度に応じて咀嚼機能障害の等級を準用して以下のとおり定められます。

嚥下障害3級相当嚥下の機能を廃したもの
 6級相当嚥下の機能に著しい障害を残すもの
10級相当嚥下の機能に障害を残すもの

なお,嚥下障害が食道の狭さくによって生じている場合には,胸腹臓器の後遺障害等級の問題となります。

味覚障害

味覚

味覚は,舌にある味蕾により感じる感覚であり,感じる感覚として,甘味・塩味・酸味・苦味の4種類の基本味質があります。

検査方法

味覚障害の検査方法は,濾紙ディスク法による最高濃度液による検査によります。

具体的には,①ショ糖(甘味),②食塩(塩辛味),③酒石酸(酸味),④塩酸キニーネ(苦味)の4基本味質の5段階の濃度の試験液を用い,試験液を浸した濾紙ディスクを検査部位に置き味覚を感じるかどうかを見ることにより判断します。

味覚障害の後遺障害等級

味覚障害については,早見表に定めがないため,政令別表第二備考6を適用し,神経障害ではないものの全体として神経障害に近い障害とみなして,嗅覚脱失については別表第二12級13号を準用して12級相当として,嗅覚減退については別表第二14級9号を準用して14級相当と判断します。なお,味覚障害は,日時の経過により漸次回復する場合が多いため,等級認定は,原則として治癒6ヶ月後に行うこととされています。

味覚脱失12級相当味覚脱失

→基本4味質がすべて認知できないもの。

14級相当味覚減退

→基本4味質のうち1味質以上を認定できないもの。

補足

なお,味覚障害については,それ自体では労働能力に直接的な影響を与えないため,労働能力喪失率の制限が争点となることが多い障害といえます。

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