【交通事故による後遺障害】脳損傷による麻痺

交通事故被害に遭って脳損傷負ったために,不幸にも身体に麻痺を残してしまった場合,交通事故賠償上どのように扱われるのかについて,以下,見ていきたいと思います。

 

第1 自賠責保険にいう麻痺とは

1 後遺障害等級認定の対象となる脳損傷による麻痺

麻痺には運動障害と感覚障害がありますが,身体性機能障害として自賠責保険の後遺障害等級認定の対象となる麻痺は,運動障害としての麻痺(運動性,支持性,巧緻性及び速度についての支障)に限られます。

2 生じた範囲による麻痺の分類

麻痺は,生じた部位によって,四肢麻痺(両側の四肢の麻痺),対麻痺(両下肢又は両上肢の麻痺),片麻痺(一側の上下肢の麻痺),単麻痺(上肢又は下肢の一肢のみの麻痺)に分類されます。

もっとも,脳損傷を原因とする場合には,対麻痺が生じることはないとされているため,対麻痺は認定基準の対象とされていません。

3 程度による麻痺の分類

また,麻痺は,その程度によって,高度の麻痺,中等度の麻痺,軽度の麻痺,軽微な麻痺に分類されます。それぞれの内容は,以下のとおりです。

(1)高度の麻痺

障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ,障害のある上肢又は下肢の基本動作(下肢においては歩行や立位,上肢においては物を持ち上げて移動させることができないもの)をいい,次のようなものが該当します。

①完全強直又はこれに近い状態にあるもの

②上肢においては,3大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの

③下肢においては,3大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの

④上肢においては,随意運動の顕著な障害により,障害を残した1上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの

⑤下肢においては,随意運動の顕著な障害により,1下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの

(2)中等度の麻痺

障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいい,次のようなものが該当します。

①上肢においては,障害を残した1上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した1上肢では文字を書くことができないもの

②下肢においては,障害を残した1下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしに階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの

(3)軽度の麻痺

障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており,障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているものをいい,以下のようなものが該当します。

①上肢においては,障害を残した1上肢では文字を書くことに困難を伴うもの

②下肢においては,日常生活は概ね独歩であるが,障害を残した1下肢を有するため不安定で転倒しやすく,速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしに階段を上ることができないもの

(4)軽微な麻痺

運動性,支持性,巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの,又は運動障害は認められないものの,広範囲にわたる感覚障害が認められるものをいい,以下のようなものが該当します。

①軽微な随意運動の障害又は軽微な筋緊張の亢進が認められるもの

②運動障害を伴わないものの,感覚障害が概ね1上肢又は1下肢の全域にわたって認められるもの

 

第2 脳損傷による麻痺(身体性機能障害)の後遺障害等級

脳損傷による麻痺の場合,麻痺の範囲,程度,介護の有無及びその程度により以下のとおりの後遺障害等級認定がなされます。

なお,軽微な麻痺については,麻痺ではなく,12級の神経症状としての認定がなされます。

四肢麻痺 片麻痺 単麻痺
1級 ①高度、又は

②中等度(常時介護)

高度(常時介護)
2級 中等度(随時介護) 高度
3級 中等度(介護なし)
5級 軽度 中等度 高度
7級 軽度 中等度
9級 軽度
12級 軽微 軽微 軽微

 

第3 補足

脳損傷による麻痺(身体性機能障害)が残る場合には,精神障害と一緒に残存することが多く,麻痺単独で争点となることはそれほど多くありません。

自賠責保険においても,高次脳機能障害と麻痺(身体性機能障害)とを分離することなく,それらの障害による就労制限や日常生活制限に応じて総合的判断がなされます。

 

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