信号機による交通整理のない交差点での直進自転車と直進四輪車・二輪車との出会頭衝突事故の基本的過失割合

信号機による交通整理のない交差点において,直進自転車と直進四輪車・単車との出会頭交通事故が発生した場合,自転車と四輪車・単車との過失割合はどのようになるのでしょうか。

信号機による交通整理のない交差点での自転車と四輪車・二輪車との出会頭衝突事故の基本的な考え方

信号機による交通整理のない交差点において,自転車と四輪車・二輪車との出会頭衝突事故が発生した場合,交差点という場所による考慮要素と,自転車・単車・四輪車という車両による考慮要素とを合わせて考えて過失検討をする必要があります。

交差点という場所による考慮事項

信号機による交通規制のなされていない交差点では,異なった方向から同時に車両等が進入してくることとなるため,事故発生防止及び円滑交通の要請が働きます。そこで,道路交通法では,36条と37条の2箇条でその優先関係を定めています。

自転車,四輪車・単車という車両による考慮事項

道路交通法上,自転車は軽車両と定義されていますので(道交法2条1項11号),自転車は車両として扱われることになります(道交法2条1項8号)。

したがって,自転車は,法律に例外規定がある場合を除いて,道路交通法における車両を対象とする規制に服することとなります。そのため,一般車両とは異なった扱いを受けることとなり,歩行者との関係では強者として扱われるものの,四輪車・単車との関係では弱者として扱われるのが原則です。

そのため,自転車が交通事故に遭った場合,その過失割合については,通常,歩行者との関係では不利に,四輪車・単車との関係では有利に認定されます。

信号機による交通整理のない交差点での直進自転車と直進四輪車・二輪車との出会頭衝突事故の基本的過失割合

では,具体的に交差点の状況に応じて場合分けをして,基本的過失割合について見ていきましょう。なお,以下の基準は、信号機による交通整理の行われていない交差点における出会頭衝突事故のうち,見通しがきかない交差点であることを前提としています(見通しのきく交差点においては出会頭衝突事故が生じることは稀であるため,見通しがきくことは修正要素とされるにとどまっています。)。

また,自転車が,高速度運転をするものである場合には,同車を有利に扱う理由に乏しいとして,相手方が四輪車・単車と自転車との交通事故については,自転車がロードバイク等の場合で高速度をしていた場合には,以下の基準によらずに,「四輪車と単車との事故」類型をもとに過失認定をするとされています(別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)・389頁)。

同幅員の交差点の場合

同幅員の交差点の場合には,通常事故場所による過失割合は同程度であると思料されるため,主に車両の特性のみによって過失割合が決せられます。

①自転車20%:四輪車・単車80%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【240図】参照

一方が明らかに広い道路であり,かつ見通し悪い交差点の場合

①広路自転車10%:狭路四輪車・単車90%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【241図】参照

②狭路自転車30%:広路四輪車・単車70%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【242図】参照

一方に一時停止規制がある場合

信号機による交通整理がなされていない交差点で道路標識等により一時停止規制がなされている場合には,そこを通過しようとする車両は,具体的な危険の有無にかかわらず,必ず指定場所において一時停止をすることを義務付けられますので,かかる一時停止規制の有無が過失に大きく影響します。

①一時停止規制なし自転車10%:一時停止規制あり四輪車・単車90%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【243図】参照

②一時停止規制あり自転車40%:一時停止規制あり四輪車・単車60%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【244図】参照

一方が優先道路,または一方が明らかに広く見通しの良い交差点の場合

優先道路を走行している車両,交通整理がないが左右の見通しがきく交差点の場合で他方道路より明らかに狭い道路を通行しているのではない車両は,交差点進入時の徐行義務が免除されていますので,これによる優先関係が過失に大きく影響します。

①優先道路自転車10%:劣後道路四輪車・単車90%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【245図】参照

②劣後道路自転車40%:優先道路四輪車・単車60%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【246図】参照

一方に一方通行違反がある場合

見通しがきかない交差点である場合には,一時停止規制がない側を走行車両にも徐行義務が課せられますので(道路交通法42条1号),安全確認義務違反という注意義務違反が認められます。

①違反なし自転車10%:一方通行違反四輪車・単車90%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【247図】参照

②一方通行違反自転車50%:違反なし四輪車・単車60%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【248図】参照

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です