自分の子供と信じていた息子・娘が妻の不倫相手の子であったことが発覚した場合に夫が取るべき法的手続きとは

妻が不倫相手と不貞行為を行い,不倫相手の子を妊娠・出産してしまったとします。

夫にとってはそのこと自体,許しがたいことであると言えますが,放っておくとさらに悲惨なこととなります。

夫は,他人の子ではあっても戸籍上の父であるために,妻とその不倫相手の子を養育する義務を負い,極め付けとして死んだらその子に財産を相続させるという法律上の身分関係が継続することになるからです。

なぜそんなことになるのか説明します。

子供の法律上の父親は誰か

別稿:子供の法律上の父親は誰かで詳しく説明しましたが,産まれてくる子供の法律上の父親は,母親の法律上の夫です。精子提供者ではありません。

そのため,妻が不倫相手の子を妊娠・出産した場合であっても,産まれてきた子の法律上の父親は不倫相手ではなく,法律上の夫なのです。

裏切られた夫の心情としては,とても受け入れられるような話ではありませんが,法律上はそのように決められています。

色々異論がある結論なのですが,歴史的沿革からやむを得ないとされています。

夫が,妻の不倫相手の子の法律上の方父親となる結果として,夫は,その子を扶養しなければならない義務を負うこととなります。

しかも,子供に対する扶養義務ですので,自分の生活を削ってでも言わば裏切り者の子供の面倒を見なければならないのです。

夫が取るべき法的手続き

妻の不倫相手の子の面倒を見るなど,裏切られた夫にとっては,許しがたい話だと思いますので,法はこれを回避するための制度を設けています。

この法的手続きは,婚姻関係にある母から産まれた子(生来の嫡出子)がどの立場となる子であるかによって異なります。

民法上,子は,実子と養子に,そのうち実子は嫡出子と非嫡出子に,さらに嫡出子は生来の嫡出子と準正嫡出子に,そして生来の嫡出子は,推定される嫡出子・推定されない嫡出子・推定の及ばない子に分けられます。



①推定される嫡出子とは,妻が婚姻中に妊娠した子(民法772条1項),又は婚姻中の妊娠が証明できない場合には婚姻成立日から200日後~婚姻解消日から300日以内に産まれた子をいいます(民法772条2項)。

②推定されない嫡出子とは,婚姻中の妊娠ではなく,または婚姻成立日の200日以内か婚姻解消後300日以降に産まれた子をいいます。

③推定の及ばない子とは,嫡出の及び期間(前記①の期間)内に産まれたが,妻が懐胎期間中に夫と肉体関係を持たず,夫の実子でないことが明らかな子をいいます。

推定される嫡出子の場合:嫡出否認の訴え

嫡出される嫡出子の,嫡出子たる身分を奪うためには(本件であれば,浮気をされた夫の子ではないとするためには),嫡出否認の訴え又は審判によらなければならないとされています。

否認権者は原則夫のみで(民法774条),夫が「子の出生を知った時(不貞行為を知ってからではありません。)」から1年以内に訴え提起をする必要があります(民法777条)。

1年経過後は,夫(戸籍上・法律上の父)は,嫡出否認の訴えはもちろん,親子関係不存在の訴えを提起することもできないとされています(最判平成12年3月14日・判例時報1708号106頁)。

推定されない嫡出子・推定の及ばない子の場合:親子関係不存在確認調停申立て→同確認の訴え

嫡出されない嫡出子及び推定の及ばない子の,嫡出子たる身分を奪うためには(本件であれば,浮気をされた夫の子ではないとするためには),親子関係存否確認の訴えによって,いつ・誰からでもその身分を覆すことが出来ると解釈されています(大判昭和15年9月20日・民集19巻1596頁)。

なお,親子関係存否確認の訴えでは,調停前置主義がとられていますので(家事事件手続法257条1項),訴訟提起の前に調停申立てがなされ,話し合いによって調停が成立すると合意に相当する審判がなされ,この審判が確定すると確定判決と同一の効力を有することになります。

そのため,子が推定されない嫡出子・推定の及ばない子の場合はまずは話し合いで決着が図られ,話し合いで決着がつかない場合(調停不成立の場合)に初めて裁判で決着がつけられることになります。

まとめにかえて

今まで自分の子と信じて面倒を見ていた子供が,実は妻の不倫相手の子であったことを知ったときの夫の精神的ショックは計り知れません。

子供に罪がないことはわかりつつも,裏切った妻のみならず,産まれて来た子に対しても,許しがたい気持ちになるかもしれません。

あってはならないことなのかもしれませんが,万一以上のようなことが発覚した場合には,一人で抱え込まず,まずはお近くの弁護士に相談されることをお勧めします。

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