私人逮捕(一般人による現行犯逮捕)が認められる理由と誤認私人逮捕の責任とは

私人逮捕という言葉をご存知ですか。

私人逮捕という単語は,法律に記載されたものではないため,法律用語という訳ではありませんが,世間ではこの呼び方が一般的と思いますので,本稿でもあえてこの用語に乗っかって説明します。

私人逮捕とは,一言で言うと,一般私人による現行犯人の逮捕行為のことをいいます。

以下,私人逮捕について簡単に説明します。

私人逮捕の要件

逮捕とは,逃亡又は証拠隠滅のおそがある被疑者の身体を短期的に拘束することいいます。

逮捕は,人の身体を拘束する過酷な人間侵害行為ですので,捜査機関である検察官又は司法警察員(刑事訴訟法199条2項)が請求し,裁判官によって発行された逮捕令状によって行われるのが原則です(憲法33条,刑事訴訟法199条1項)。

すなわち,原則として,逮捕は捜査機関により行われるものなのです。

もっとも,わが国では,現行犯人の場合に限り,捜査機関でない一般私人であっても逮捕することが認められています(憲法33条,刑事訴訟法213条)。

私人逮捕の逮捕時の要件

私人逮捕の逮捕時の要件としては,逮捕令状が不要であることを除いては,以下の要件を充足する限り,基本的には捜査機関が行う逮捕と同様です。

①犯人が現行犯又は準現行犯であること(刑事訴訟法212条1項,2項)

現行犯人とは,現に罪を行い,又は行い終わった者をいうとされています。

なお,準現行犯(犯人として追呼されているとき,贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき,身体又は被服に犯罪の顕著な証拠があるとき,誰何されて逃亡しようとするとき,刑事訴訟法212条2項)は現行犯人とみなされます。

現行犯逮捕が令状主義の例外とされるのは,犯罪の実行が明白であり,司法判断を経なくても誤認逮捕の可能性がないとされているからです。

また,現行犯逮捕が捜査機関でない一般人であっても可能とされるのは,犯罪を現認した者が,捜査機関を呼びに行く時間的余裕がなく,犯人確保の緊急性が高いからです。

②軽微犯罪の場合には,住居不定・氏名不詳又は逃亡のおそれがあること(刑事訴訟法217条)

現行犯罪が軽微犯罪(30万円以下の罰金・拘留・科料に当たる罪)の場合,①の要件に加え,現行犯人が,住居不定・氏名不詳又は逃亡のおそれがあるとされることも要件として追加されます。

私人逮捕の逮捕後の要件

一般人が現行犯人を逮捕した場合,当該一般人は,直ちに現行犯人を検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならないとされています(刑事訴訟法214条)。

私人逮捕が許されるのは,あくまでも前記要請による犯人確保の緊急性が高いことによるものに過ぎず,その後の捜査を私人がするわけではありませんので,当然の要件です。

誤認私人逮捕の場合

では,私人逮捕が適法ではなかった場合,具体的には,適法な私人逮捕であるとして,私人が私人を逮捕したが実は逮捕された者が現行犯人ではなかった場合,逮捕をした私人はどのような責任を問われるのでしょうか。

刑事上の責任

前記の私人逮捕が,私人逮捕の適法要件を満たさずに行われたいわゆる勘違い逮捕だった場合,逮捕をした私人は,逮捕・監禁罪(刑法220条前段)に問われ得ることとなります。

もっとも,私人逮捕をする場合には,被逮捕者が現行犯人であると誤信していると考えられますので,故意がないとして前記犯罪が成立しないとして,刑事上の責任は免責されることが多いのではないでしょうか(過失逮捕・監禁罪が存在しないため。)。

民事上の責任

ところが,勘違いだった場合には,民事上の損害賠償義務を負う可能性は高いといえます。

なぜなら,民事上の損害賠償責任を定める民法709条は,故意のみならず過失による責任も認めているからです。



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