解散総選挙とは?多額の費用をかけ・憲法解釈を捻じ曲げてまで衆議院の解散がなされる理由

選挙が近づいてくると,「解散総選挙」という言葉が新聞・ニュース等で出てきます。

いったい衆議院解散とは何?何のために行われるのか?という疑問を持つ人が多いかもしれませので,本稿では,衆議院の解散及びそれに続く総選挙がなされる理由について,説明したいと思います。

第1 衆議院について

我が国の国会は,衆議院と参議院との二院制を採用しています(憲法42条)。

そして,この二院のうち,衆議院をより国民の意思を直接に反映する機関としてとらえ,多くの事項について,参議院に優先させています。

具体的には,内閣不信任決議権(憲法69条),予算先議権(憲法60条1項)などを衆議院に特別に認め,また法律・予算の議決,条約の承認および内閣総理大臣の指名につき衆議院の優越を認めています(憲法59条,60条,61条,67条)。

その反面,その時期のより正確な民意を反映させるために,衆議院は,参議院よりも任期が短く,また任期満了前の解散制度まで存在しています(憲法45条,46条)。

憲法42条
国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

憲法45条
衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

憲法46条
参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。

第2 衆議院の解散について

1 明文規定による衆議院の解散

憲法上,明文によって衆議院の解散がなされ,結果として総選挙が行われるとされているのは,以下の2つの場合のみです。

①衆議院議員の任期満了の場合(憲法45条)

②内閣不信任案が可決されたとき,又は内閣信任案が否決されたとき(憲法69条)

2 憲法解釈による衆議院の解散

ところが,憲法解釈によって,もう1つ衆議院の解散がなされることができるされ,結果として総選挙がなされる場合が以下のとおりもう1つ追加されています。なお,この解散が認められるとする解釈理由は,憲法7条が,天皇の国事行為として衆議院の解散を挙げているところ,天皇が国政に関する権能を有しないことから(憲法4条),解散権は内閣にあり,事実上その長である内閣総理大臣がこれを有するとされています。

③内閣(実際には内閣総理大臣)が必要だと判断したとき(解釈:7条解散)

この7条解散の合憲性については,裁判で争われていますが,最高裁は統治行為論によってその判断を避けており,違憲判断はなされていません。

憲法69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

憲法7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
3号 衆議院を解散すること。

憲法4条1項
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

憲法の規定に鑑みる限り,本来,その時々の正確な国民の意思を反映するために69条に定める規定によって行われる例外的な場合を除いて,衆議院議員の解散総選挙は,4年の任期満了を経て行われることが原則となるはずです

ところが,前記のとおり,憲法7条の解釈によって内閣総理大臣が事実上衆議院の解散権を持ってしまった結果,衆議院の解散が,政争の具に成り下がってしまいました(どちらかというと,政争の具とするために7条解散という解釈をひねり出されたのですが)。

第3 内閣総理大臣が事実上の衆議院解散権を持ったことの結果

内閣総理大臣も人間ですので,時の内閣総理大臣は,できる限り長期間の政権維持を望むことが通常であり,自身や所属する与党の支持率が高いときに選挙をしたいのです。

もっとも,衆議院議員の任期満了時に,自身及び自身が所属する政党が,国民の支持を集めているとは限りません。

そこで,内閣総理大臣は,衆議院議員の任期満了が見えてきた時点で,そのときから任期満了までの間で最も有利な時期(政権維持のために選挙に勝てるタイミング)を見計らって,衆議院を解散をするということが行われ,常態化するに至ってしまいました。

実際,日本国憲法が制定された後,衆議院が解散されることなく4年の任期を満了したことは,三木内閣時のたった1回しかありません(三木内閣が衆議院を解散することなく任期満了をしたのは,同派閥が小さく力がなかったため,解散する力がなかったことによるものとも言われています。)。

平均すると,衆議院は,2年8か月ごとに解散されています。

すなわち,内閣総理大臣が事実上の衆議院解散権を持った結果,衆議院の解散は,政権与党の政争の具に成り下がり,事実上は,衆議院議員総選挙は,衆議院の解散によって行われることが原則となってしまったのです。

これが,衆議院議員総選挙の現実です。

強力な権限を持つ大統領ですら議会を解散できないアメリカ,解散権に相当の制限がある欧米各国と比べて安易に過ぎるように思います。

1回あたり600億円を超える国費が使われる衆議院議員総選挙が,政争の具です。

どうなんでしょう。



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