道路外に存する車両が,道路外から道路に進入しようとした際に交通事故が発生した場合,この道路進入車と道路上を直進走行していた車両との過失割合はどのように決められるのでしょうか。
以下,左折又は右折で道路へ進入しようようとする車両について,道路交通法上どのような注意義務が課されているか及び道路進入車両が交通事故を起こしてしまった場合の基本的過失割合を説明します。
なお,本稿は路外から道路に進入しようとする車両についての話ですが,逆の態様である道路から路外に出ようとする車両についての話については,別稿:路外進出車両の道路交通法上の注意義務と過失割合についてをご査収ください。
【目次(タップ可)】
道路進入車両の道路交通法上の注意義務
道路外から道路に進入しようとする車両の注意義務をひとまとめにして言うと,道路外から右折又は左折にて道路に進入しようとする車両は,進入しようとする前にウインカー等により合図を行い,(道路に進入しようとする際に歩道等を横断するときは,その直前で一時停止をし),歩行者や他の車両等の動静に注意して,その正常な交通を妨害しない態様で行わなければならない義務を負うととなります。
以上の注意義務が課される理由は,以下のとおりです。
① ウインカー等により合図をする義務
道路交通法は,道路における危険防止と交通安全・円滑を図ることを目的としていますので(道路交通法1条),同法にいう道路とは,これらを図る目的がある場所の全てがこれに含まれることになります(道路交通法2条1項1号)。
そのため,一般的に道路と認識されている車道等のみならず,不特定の人や車両が行き来する場所も道路として道路交通法に服することになります。
この点,同法上,道路では,軽車両を除いた車両運転者は,右折又は左折をしようとする際はこれらの行為が終わるまで,方向指示器等によって合図をしなければならないとされていますので(道路交通法53条1項),不特定の人や車両が行きかうことが出来る駐車場等から右折又は左折にて道路に進入しようとする車両は,進入前にウインカー等の合図によって,その進入意図を周囲に周知する必要があります。
なお,余談として,一般住宅の駐車場は道路交通法上の道路に該当しませんので,道路に面している住宅の駐車場から道路に進入しようとする場合,その前にウインカー等の合図が必要かについて疑問が生じるのですが,私が調べた限りでは,これを問題とした裁判例を見つけることが出来ませんでしたので,ここでは問題提起をするにとどめたいと思います。
② 進入先道路の交通を妨害しない義務
また,道路外から,右折又は左折にて道路に進入しようとする場合,歩行者や他の車両等の動静に注意して,その正常な交通を妨害しない態様にて行わなければならないとされています(道路交通法25条の2第1項)。
③ 歩道の直前での一時停止義務
以上に加えて,道路外の施設又は場所に出入りするために歩道等を横断するときは,歩道等に入る直前で一時停止し,かつ歩行者の通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法17条2項)とされています。
④ その他
なお,以上の他に,通行区分遵守義務や,前方注視義務等の一般的注意義務を負うことはもちろんです。
道路進入車両との事故の基本的過失割合
道路進入車両は,道路交通の流れとは異なる態様となるため,道路走行車両が課される一般義務に加え,前記「第1」で記載した強度の注意義務が課されています。
そこで,道路進入車両と道路走行車両とが衝突した場合,通常,道路進入車両の過失が大きいと判断されます。
道路外から右折で進入する場合
道路直進車と路外からの道路右折進入車の交通事故の出合頭衝突事故(上図の一番上右折進入中の衝突)の場合の基本的過失割合は以下のとおりです。
そして,この基本的過失割合は右折進入車両の右折の程度によりさらに基本割合が変更されます。なお,さらに議論を進めて右折進入車の「右折進入の程度に応じた」基本的過失割合の変化を確認されたい場合は,別稿:道路直進車と路外からの道路右折進入車の交通事故の場合の右折進入車の「右折進入の程度に応じた」基本的過失割合の変化をご参照ください。
(1)右折進入四輪車と直進四輪車との事故の場合
右折進入四輪車80%:直進四輪車20%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【147図】参照
(2)右折進入四輪車と直進単車との事故の場合
右折進入四輪車90%:直進単車10%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【218図】参照
(3)右折進入単車と直進四輪車との事故の場合
右折進入単車70%:直進四輪車30%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【219図】参照
(4)右折進入単車・四輪車と直進自転車との事故の場合
右折進入単車・四輪車90%:直進自転車10%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【299図】参照
(5)右折進入自転車と直進単車・四輪車との事故の場合
右折進入自転車40%:直進単車・四輪車60%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【300図】参照
道路外から左折で進入する場合
(1)左折進入四輪車と直進四輪車との事故の場合
右折進入四輪車80%:直進四輪車20%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【148図】参照
(2)左折進入四輪車と直進単車との事故の場合
左折進入四輪車90%:直進単車10%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【218図】参照
(3)左折進入単車と直進四輪車との事故の場合
左折進入単車70%:直進四輪車30%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【219図】参照
(4)左折進入単車・四輪車と直進自転車との事故の場合
左折進入単車・四輪車90%:直進自転車10%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【299図】参照
(5)左折進入自転車と直進単車・四輪車との事故の場合
左折進入自転車60%:直進単車・四輪車40%
別冊判例タイムズno.38(全訂5版)【300図】参照
路外から進入右折のミニバイクと追越禁止センターライン越えての衝突事故の過失割合はどうなりますか?
道路外から左折で道路に進入した車に衝突した場合と、衝突された場合の過失割合が同じということは、おかしくないですか。
衝突する前のお互いの車の位置関係が、全く違っていますが、皆さんいかがですか?