駐車許可証の効力とは?所轄警察署長の許可によってどこの駐車禁止が解除され得るのか

法律上駐車が禁止される場所に特別に車両を駐車させることができる制度として駐車許可があることはよく知られています。

もっとも,駐車許可は,全ての駐車禁止場所の効力を解除する訳ではありません。駐車許可を得ても駐車禁止が解除されない場所があります。

先に結論から言うと,駐車許可は,「指定駐車禁止場所」及び「周囲の構造物に起因する法定駐車禁止場所」の駐車禁止を解除し得ますが,「道路構造に起因する法定駐車禁止場所」の駐車禁止は解除できません。

以下,どういうことか説明します。

前提:駐車禁止場所にはどんな種類があるか

日本において駐車が禁止される場所は,法律上2種類あります。道路交通法上当然に禁止される「法定禁止場所」と道路標識・道路標示によって個別に禁止される「指定禁止場所」です。

駐車許可を理解するためには,この法定駐車禁止場所の区分の理解が必須となるので,まずはここを理解してから,読み進めてください。

法定駐車禁止場所(道路交通法による一律禁止)

法定駐車禁止場所とは,道路交通法上,日本中どこであっても当然に駐車が禁止される場所であり,道路の構造に起因する規制と,周辺構造物に起因する規制とが存在しています。なお,法定禁止場所においても,道路標識等により停車又は駐車をすることができることとされているときは駐停車可能とされています(道路交通法46条)。

(1)道路構造に起因する法定駐車禁止場所

① 交差点内(道路交通法44条1号),及び交差点の側端又は道路のまがりかどから5m以内の部分(道路交通法44条2号)

② 横断歩道内(道路交通法44条1号),及び横断歩道の前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分(道路交通法44条3号)

③ 自転車横断帯内(道路交通法44条1号),及び自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分(道路交通法44条3号)

④ 踏切(道路交通法44条1号),及び踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分(道路交通法44条6号)

⑤ 軌道敷内(道路交通法44条1号)

⑥ 坂の頂上付近(道路交通法44条1号)

⑦ 勾配の急な坂(道路交通法44条1号)

⑧ トンネル(道路交通法44条1号)

⑨ 安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分(道路交通法44条4号)

⑩ 乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から10m以内の部分(当該停留所又は停留場に係る運行系統に属する乗合自動車、トロリーバス又は路面電車の運行時間中に限る。道路交通法44条5号)

⑪ 駐車しようとしている車両の右側の道路上に3.5m(道路標識等により距離が指定されているときは、その距離)以上の余地がない場所(ただし,貨物の積卸しを行なう場合で運転者がその車両を離れないとき,若しくは運転者がその車両を離れたが直ちに運転に従事することができる状態にあるとき,又は傷病者の救護のためやむを得ないときは除く(道路交通法45条2項)

⑫ 道路の右側(道路交通法47条2項)

(2)周囲の構造物に起因する法定駐車禁止場所

① 火災報知機から1m以内の部分(道路交通法45条5号)

② 人の乗降,貨物の積卸し,駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から3m以内の部分(道路交通法45条1号)

③ 道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から5m以内の部分(道路交通法45条2号)

④ 消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水槽の側端又はこれらの道路に接する出入口から5m以内の部分(道路交通法45条3号)

⑤ 消火栓,指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水槽の吸水口若しくは吸管投入孔から5m以内の部分(道路交通法45条4号)

指定駐車禁止場所(標識・標示による個別禁止)

前記の法定禁止場所でなくても,標識・標示がある場所では駐車が禁止されます(道路交通法45条柱書)。

これを指定駐車禁止場所といい,具体的な規制標識等は以下のとおりです。

① 駐車禁止標識

② 駐停車禁止標識

③ 駐車禁止標示

④ 駐停車禁止標示

⑤ 指定無余地場所

駐車許可でどの場所の駐車禁止が解除されるのか

前記の駐車禁止場所についての例外が,駐車許可です。

具体的には,公安委員会の定めるところにより,所轄警察署長の駐車許可を受けたときは,前記の駐車禁止場所の一部において,駐車禁止が解除されるというものです(道路交通法45条1項ただし書き)。

では,駐車許可によって,具体的にどこの駐車禁止が解除されるのでしょうか。

指定禁止場所及び周囲の構造物による法定禁止場所は駐車禁止解除できる

所轄警察署長による駐車許可によって,「指定駐車禁止場所」及び「周囲の構造物による法定駐車禁止場所」(道路交通法45条1項各号の場所)の双方の禁止が解除され得ます(道路交通法45条1項ただし書き)。なお,実務上は,これらに加え,時間制限駐車区間内における駐車許可というものあります(道路交通法49条の2第5項)。

もっとも,所轄警察署長が,個別事案の許可の際に,指定駐車禁止場所のみに限定し,法定駐車禁止場所に効力を及ぼすべきではないと判断した場合には,許可の条件として法定駐車禁止場所を除外して駐車許可をする場合はあり得ます(上記写真内の駐車場所の欄のただし書きが,法定駐車禁止場所を除外して駐車を許可した場合の記載です。)。

道路交通法45条1項
車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。
一 人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から三メートル以内の部分
二 道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から五メートル以内の部分
三 消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水そうの側端又はこれらの道路に接する出入口から五メートル以内の部分
四 消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水そうの吸水口若しくは吸管投入孔から五メートル以内の部分
五 火災報知機から一メートル以内の部分

道路構造による法定禁止場所は駐車禁止解除できない

他方で,所轄警察署長による駐車許可では,「道路構造による法定駐車禁止場所」(道路交通法44条の駐停車禁止場所,道路交通法75条の8の駐停車禁止場所)については駐車禁止解除の効力は発生しません

なぜなら,道路構造による法定駐車禁止場所は,その全てが駐車を認めると事故発生の危険が高い場所といえますので,かかる場所に対する駐車許可を認める条文が存在していないからです。

終わりに

以上が,道路交通法の条文解釈を基にした,駐車禁止場所と駐車許可についての解説でした。興味があれば,以下の該当条文のところを読み込んでいただければ,より詳しくご理解いただけます。

インターネット上では,法定駐車禁止場所につき,周囲の構造物による法定駐車禁止場所と,道路構造による法定駐車禁止場所とが分けられずに記載している記事が散見されますが,これらを分けずに駐車許可を理解することは不可能ですので,注意してください。

なお,具体的な駐車許可申請手続きについては,各都道府県警察のホームページに詳しく書いてありますので,当該ページをご参照ください。



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