【交通事故による後遺障害】外傷性てんかん

交通事故に遭って頭部に外傷を負った場合,事後に外傷性てんかんが発症することが珍しくありません。

頭部外傷により生じる外傷性てんかんとはいかなるもので,損害賠償上どのように扱われるのかについて,以下検討していきたいと思います。

第1 外傷性てんかんとは

てんかんとは,大脳ニューロンの過剰は突発的反射に由来する反復性の発作を主徴とする慢性の脳疾患と定義されています。

このてんかんが,交通事故などの外傷によってもたらされた脳の損傷によって生じたものを,外傷性てんかんといいます。

外傷性てんかんは,必ずしも外傷直後に発症するとは限らず,何十年も遅れて発症する場合もありますので,賠償上は困難な理論的問題が生じうる難しい論点です。

 

第2 外傷性てんかんの診断基準

外傷性てんかんの診断は,以下のWalker の6項目基準によってなされるのが一般的です。

① 発作がてんかん発作である

② 受傷前にてんかん発作がなかった

③ 外傷が脳損傷を起こすのに十分な程度の強さであった

④ てんかん発作の初発が外傷後あまり経過しない時期に起こった

⑤ 他にてんかん発作を起こすような脳や全身疾患を有しない

⑥ てんかんの発作型・脳波所見が脳損傷部位と一致している

てんかんを示す異常脳波として,スパイク波(棘波)・鋭波などがあり,外傷性てんかんを有する患者は,てんかん発作時には発作時脳波が出現し,またてんかん発作がない時でも発作間欠期脳波として患者特有のてんかん性異常所見が認められるのが通常です。

もっとも,脳波所見も,判断基準の1つにすぎず,脳波異常がてんかんの診断上絶対的要素を占めるわけではありません。

実際に,1回の脳は検査でてんかん性異常が発見できるのは40~50%といわれ,繰り返し検査することで検出率が70~80%にのぼるといわれています。

また,MRI・CT等の画像診断も,発作の原因等を判断するのに有用です。

 

第3 外傷性てんかんの治療

てんかんの治療は,抗てんかん薬による薬物治療が中心であり,薬物の継続服用によって,発作を完全に抑制することを目的とします。

そのため,専門医の治療によっても医療効果が期待できないと認められるか,または治療により症状が安定した場合に,症状固定とされます。

なお,選択される薬剤は,発作の型によって異なります。

 

第4 外傷性てんかんの認定基準

1 等級認定の方法

外傷性てんかんの等級認定は,発作の型・発作の回数等に着目してなされます。

2 認定基準

5級 1か月に1回以上発作があり,かつその発作が意識障害の有無を問わず転倒する発作または意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作であるもの(以下、「転倒する発作等」といいます。)
7級 数か月に1回以上転倒する発作等があるもの、又は 1か月に1回以上転倒する発作等以外の発作があるもの
9級 数か月に1回以上転倒する発作等以外の発作があるもの、又は 服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級 発作の発現はないが、脳波上明らかにてんかん性棘波を認めるもの

3 転倒する発作等の例

前項の基準内にある転倒する発作または意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作の例は次のとおりです。

(1)転倒する発作の例

意識消失が起こり,その後直ちに四肢等が強く突っ張る強直性のけいれんが続き,次第に短時間の収縮と弛緩とを繰り返す間代性のけいれんに移行する強直間代発作や,脱力発作のうち,意識は通常あるものの筋緊張が喪失して倒れてしまうもの等。

(2)意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作の例

意識混濁を呈するとともに,うろうろ歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し,発作中は周囲の状況に正しく反応ができないもの等。



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