【交通事故による後遺障害】大動脈解離

交通事故の際の衝撃によって,大動脈が損傷する場合があります。
交通事故によって大動脈に損傷が生じた場合,損害賠償上はどのように扱われるのでしょうか。

以下,大動脈とは何か,大動脈の器質的障害についての後遺障害等級の順についてみていきましょう。

大動脈とは

大動脈とは,心臓の左心室から出て上行したのちに,弓状に反転して心臓と脊椎の間を下行し,総腸骨動脈の分岐部に終わる最大の動脈であり,全身に血液を送り出す動脈のことです。

大動脈のうち,上向きの部分は上行大動脈(長さ約5cm),弓状の部分は弓部大動脈(長さ約4.5cm),下向きの部分は,横隔膜までの部分を下行胸部大動脈(長さ約20cm),横隔膜から左右の総腸骨動脈に分岐するまでの部分を腹部大動脈(長さ約15cm),とそれぞれ呼ばれています。

大動脈からは多数の動脈が枝分かれしており,具体的には,基部からは2本の冠動脈が,弓部からは腕頭動脈・総頸動脈・鎖骨下動脈が,下行胸部大動脈や腹部大動脈からは脊髄や各臓器等に向けて多くの動脈が枝分かれしています。

外傷による大動脈解離

大動脈に解離を残すものとは

自賠責保険では,外傷による大動脈の損傷については,大動脈に偽腔開存型の解離を残すものという1類型について,等級が存在しています。

大動脈解離とは,大動脈の内膜が縦に裂けた症状をいいます。

大動脈解離の多くは,大動脈の内側に生じた亀裂から動脈圧により内膜内に血液が流出し,大動脈が真腔と偽腔(解離腔)とに分離して起こると考えられています。

交通事故により大動脈解離が生じた場合,血管の破裂により身体に酸素や栄養が供給されなくなりますので,裂けた場所や流れ込んだ血液の量によってはショック症状が起き,直ちに生命への危機的状況が生じます。

大動脈解離の後遺障害等級

(1)大動脈に偽腔開存型の解離を残した場合には,別表第二11級10号に該当するとされます。

偽腔開存型の大動脈解離を残した場合には,通常の日常生活動作には制限を生じませんが,再破裂の危険を防止するために大動脈径の拡大を避ける必要があることから,血圧の急激な上昇をもたらすような重労働が制限されることとなりますので,後遺障害等級認定がなされます。

(2)他方で,偽腔に流入した血液が短期間で血栓化し,偽腔に血流のない偽腔閉塞型となった場合には,解離部の血管壁が強靭化し,同所の再破裂の危険がなくなると考えられますので,後遺障害等級認定はなされません。

補足

大動脈解離は,交通事故外傷によって生じることは多くない上,血管の病気として発生し得る病態ですので,被害者が負ったの大動脈解離が,病気によって生じたものか,交通事故外力により生じたものかが争われることも多い難しい症例といえます。



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