交通事故被害者の装備品は人損か物損か

交通事故に際し,被害者が身に着けていた物が既存・紛失した場合,物損として扱われるのか,それとも人損として扱えるのかが問題となります。

一見,加害者側負担しなければならないことに変わりがないため,どちらでもよさそうにも思えるが,人損として扱うことができれば,「身体」が害された場合における損害賠償を保障する自動車損害賠償保障法(自賠法)の適用を受け自賠責保険金の支払いを受けることができるためにその区別が問題となるのです(物損の場合には自賠法の適用はないため)。 “交通事故被害者の装備品は人損か物損か” の続きを読む

【損害拡大防止義務】交通事故被害者が被った損害のうち被害者負担となるものについて

交通事故被害に遭った場合,加害者側に損害賠償請求することができることはもちろんですが,被害者自身が加入している保険会社に対して保険金(人身傷害補償保険金・車両保険金など)の請求ができる場合があります。

もっとも,その交通事故被害者であっても,当事者間の損害の公平な分担という観点からむやみに損害を拡大させることがないようにする義務を負うと考えられ(損害拡大防止義務),被害者がある行動を取っていれば損害の拡大を容易に防止できたにもかかわらず,その行動を取らなかったことにより損害が拡大した場合にはその損害は被害者が負担すべきであると考えられています。

以下,どのような根拠で損害拡大防止義務が課されることとなり,具体的にどのような効果をもたらすかについて簡単に説明したいと思います。 “【損害拡大防止義務】交通事故被害者が被った損害のうち被害者負担となるものについて” の続きを読む

【交通事故によるむち打ち】外傷による頚部損傷まとめ

交通事故においては,明らかな骨折や脱臼を伴わない頚椎支持軟部組織(靭帯,筋肉,椎間板等)の損傷を主体とするむち打ち所見が頻発し,多くの場合これが原因となって当事者間で紛争となります。

そこで,以下,交通事故処理専門弁護士が,交通事故におけるむち打ち損傷事案処理に必要な限度での最低限の頚部損傷についての概略説明をしますので,交渉の前提としていただければ幸いです(なお,厳密な意味での医学的見解と異なる場合があることを前提としていただきたい。)。

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警察提出用診断書の証明力(人身届とともに警察提出した診断書の証明力)

交通事故に遭ってケガをした場合,警察に診断書を提出するのが一般的です。

そのため,交通事故被害者は,事故に遭ったかなり初期の段階で医師から診断書を受け取ります。大体の書式は上の写真のとおりであり超シンプルです(便宜上,本稿ではこの初期の診断書を警察提出用診断書といいます。)。

では,この警察提出用診断書は,後に民事事件として治療経過等が争われた際の立証資料として使えるのでしょうか。

以下,警察提出用診断書の特殊性からその証明力について説明します。 “警察提出用診断書の証明力(人身届とともに警察提出した診断書の証明力)” の続きを読む

近親者固有の慰謝料請求権について(交通事故被害者の親族は被害者本人の損害とは別に自身の精神的損害の賠償請求ができるか)

交通事故に起因する損害賠償は,被害者が被った損害の賠償を加害者に対して請求するものですので,原則として,請求権者は損害を被った被害者本人に限定されるはずです(民法709条参照)。

もっとも,交通事故によってその被害者が死亡したり重度の後遺障害を負ったりした場合には,交通事故被害者本人のみならずその家族・親族も大きな精神的苦痛を被ることが容易に想像ができます。

そこで,法は,この被害者の親族自身が被る精神的損害についても一定の填補を得ることができるとしています。いわゆる近親者固有の慰謝料です。 “近親者固有の慰謝料請求権について(交通事故被害者の親族は被害者本人の損害とは別に自身の精神的損害の賠償請求ができるか)” の続きを読む

年金生活者が交通事故被害に遭った場合に後遺障害逸失利益・死亡逸失利益を賠償してもらえるのか(年金収入が基礎収入となるか)

高齢等の理由によって職に就くことなく年金受給額のみで生活されている方が交通事故被害に遭って後遺障害を負った場合又は死亡した場合,同人の損害賠償額積算にあたり年金収入額を基礎収入に算入することはできるのでしょうか。

交通事故被害者に後遺障害が残ったり,同被害者が死亡したりする場合には,損害賠償額が高額になることが多く,強く争われることが多い論点ですが,結論的には,後遺障害逸失利益の場合と死亡逸失利益との場合ではその結論に違いがあります。 “年金生活者が交通事故被害に遭った場合に後遺障害逸失利益・死亡逸失利益を賠償してもらえるのか(年金収入が基礎収入となるか)” の続きを読む

交通事故被害に遭った事業所得者・自営業者が申告外所得を主張した場合,休業損害・逸失利益算定の基礎収入にこれを含めることができるのか

交通事故被害に遭われた方の損害填補の1つとして休業損害・逸失利益というものがあります。

この休業損害や死亡・後遺障害逸失利益を算定する場合の基礎収入額は,基本的には,休業期間又は逸失利益算定期間の基礎となる期間を通じて得られる蓋然性のある額をもって決定されます。 “交通事故被害に遭った事業所得者・自営業者が申告外所得を主張した場合,休業損害・逸失利益算定の基礎収入にこれを含めることができるのか” の続きを読む

交通事故被害に遭った際に身に着けていた物(装備品)の損壊は,人的損害・物的損害のどちらと扱われるのか?

交通事故被害に遭った際,身につけていた服,メガネ,補聴器,時計,アクセサリー等も一緒に損傷される場合があります。 “交通事故被害に遭った際に身に着けていた物(装備品)の損壊は,人的損害・物的損害のどちらと扱われるのか?” の続きを読む

【自賠基準の休業損害】交通事故被害者が自賠責保険に休業損害を請求する際に知っておきたい基本的事項とは


交通事故被害に遭われてケガをされた方が,通院等のために休業を余儀なくされた場合,被った休業損害について,加害者本人に対しても請求できますが,加害車両に付保されている自賠責保険会社に対してもその請求ができます。

従前,自賠責保険制度と交通事故被害者請求による自賠責保険金の請求方法について説明しましたが,本稿では,その中の1つの論点である,自賠責保険に対する休業損害請求の基本について検討したいと思います。 “【自賠基準の休業損害】交通事故被害者が自賠責保険に休業損害を請求する際に知っておきたい基本的事項とは” の続きを読む

法人又は団体の役員が交通事故被害者となった場合の休業損害の考え方(損害賠償上の基本原則と自賠責保険における小規模法人の特例について)

法人又は団体役員の方が交通事故被害に遭われて休業した場合,休業損害の請求ができるのでしょうか。

一般的には,社長は休んでも役員報酬がもらえるのではないかという疑問があるため,休業損害の有無,休業損害額計算の前提となる基礎収入額の特定が問題となります。 “法人又は団体の役員が交通事故被害者となった場合の休業損害の考え方(損害賠償上の基本原則と自賠責保険における小規模法人の特例について)” の続きを読む