皆さんは,二輪車の区分をご存知ですか。おそらく,50cc未満の二輪車を原付という程度の認識の方が多いのではないでしょうか。かくいう私も,弁護士になるまでは,そんな認識でした。
実は,二輪車は,法律によって細かく区分され,それによりさまざまな規制を受けています。
そこで,以下,二輪車の区分を簡単に説明し,その結果どのような規制がなされているのかを説明したいと思います。
【目次(タップ可)】
二輪車の道路運送車両法・道路交通法の区分について
二輪車の区分を規定する法律として,道路運送車両法と,道路交通法があります。
道路運送車両法は,所有権の公証と,自動車の整備事業の健全な発達等を目的するための法律で,車両を,①自動車・②軽車両・③原動機付自転車の3つに区分し(道路運送車両法2条),登録・届出・検査等についての分類をしています。二輪車も,この3つの区分に割り振られています。
道路交通法は,交通の円滑を図りつつ,道路上における交通の安全を図ることを目的とする法律で,二輪車は,自動車とは別に,①大型自動二輪車・②普通自動二輪者・③原動機付自転車に区分し,運転免許・道路走行時の注意義務について分類しています。
道路運送車両法と道路交通法の二輪車の区分をまとめると,以下の表のとおりとなります。道路運送車両法と道路交通法とで,微妙に区分が異なります(道路運送車両法に至っては,125ccを超えると自動車扱いです。)。
道路運送車両法の区分 | 道路交通法の区分 | |
50cc以下 | 第一種原付 | 原付 |
50cc超125cc以下 | 第二種原付 | 普通自動二輪 |
125cc超250cc以下 | 二輪の軽自動車 (軽二輪) | |
250cc超400cc以下 | 二輪の小型自動車 (小型二輪) | |
400cc超 | 大型自動二輪 |
道路運送車両法と道路交通法の区分による二輪車の扱い
道路運送車両法の区分を基にした二輪車の実務上の扱い
道路運送車両法は,前記のとおり,所有権の公証と,自動車の整備事業の健全な発達等を目的するために,登録・届出・検査等の分類をしており,同法による二輪車の実務上の扱いをまとめると以下のとおりとなります。
道路運送車両法について,弁護士業務で主に問題となるのは,車両の所有権の証明手段です。弁護士法23条照会をする際の照会先がどこか,また実際に所有名義を確認するために準備すべき書面は何かが,同法により明らかになります。
道路運送車両法の扱い | 登録の要否 | 車両の所有権証明手段 | 車検 | |
50cc以下 | 第一種原付 | 陸運局への登録等不要。地方税法により,市区町村へ地方税の納付申告を行い,ナンバー交付を受ける。 | 市役所の「標識交付証明書」,「申告済証」 | 不要。 (自動車でない) |
50cc超125cc以下 | 第二種原付 | |||
125cc超250cc以下 | 二輪の軽自動車(軽二輪) | 運輸局に「届出」を行い,車両番号の指定を受ける。 | 陸運局の「軽自動車届出済証」 | 不要(道路運送車両法上「検査対象外軽自動車」) |
250cc超400cc以下 | 二輪の小型自動車(小型二輪) | 運輸局の新規検査後に車両番号の指定を受ける。なお,同手続きは自動車の登録とは異なるが,実務的には「登録」で通用している。 | 陸運局の「自動車検査証」 | 必要。 (陸運局の検査の有効期間は2年間のため継続使用する場合は2年ごとの検査要。) |
400cc超 |
道路交通法の区分を基にした二輪車の実務上の扱い
他方で,道路交通法は,交通の円滑を図りつつ,道路上における交通の安全を図ることを目的とするために,運転免許・道路走行時の注意義務について分類しており,同法による二輪車の実務上の扱いをまとめると以下のとおりとなります。
道路交通法について,弁護士業務で主に問題となるのは,当然に,過失割合の問題です。二輪車の区分に従っていかなる注意義務が課され,その違反の程度がどの程度かについて,同法を参考として検討されます。
免許の種類 | 規制の種類 | |
50cc以下 | 原付免許 | 原付特有の規制有り |
50cc超125cc以下 | 普通自動二輪免許 (小型限定) | 二輪車特有の規制あり |
125cc超250cc以下 | 普通自動二輪免許 | |
250cc超400cc以下 | ||
400cc超 | 大型自動二輪免許 |
道路交通法と道路運送車両法について
法律の目的が異なるのは理解できますが、同じ用語が異なる意味を持つのは混乱を招きます。
別の事務部門が一つの対象を扱う時は用語を調整して何の話かを明示する必要があります。
縦割り行政の悪弊もろ出しは何時まで経っても改まりません。