ヘルメットをかぶっていないバイク運転者の交通事故の過失相殺割合(裁判例・道路交通法は未着用を過失修正要素とするか)

わが国では,原動機付自転車を運転する場合であっても,大型・普通自動二車であっても,バイクを運転する場合には,ヘルメットを装着しなければならないという義務があります(道路交通法71条の4第1項・2項)。

では,バイクの運転者が,ヘルメットを装着しない状態で交通事故に遭った場合,当該ヘルメット未着用による過失が問われるのでしょうか。

ヘルメット装着義務違反による過失が問われるのはどのような場合か,問われる過失の程度はどれ位かについて,順に見ていきましょう。

なお,自転車についても,児童・幼児を乗車させるときは,保護者が,当該児童・幼児にヘルメットを被らせなければならないとする努力義務があります(道路交通法63条の11)。

他方,構造上二輪車の体裁であっても,ミニカー登録された車両については,ヘルメット装着義務はありません。

バイク運転者のヘルメット未着用の場合の過失原則

前記のとおり,ヘルメットを被らずにバイクを運転すること法律上禁止されていますが,ヘルメット未着用という一点の事実のみで,一律に不利な過失修正をすることについては,理論上の困難性を伴います(この点については,[同乗者のシートベルト未装着・不着用の場合の過失割合],[酒気帯び運転の場合の過失割合],[無免許運転の場合の過失割合]と同様の問題提起です。)。

なぜなら,一般に,ヘルメット被っていても,被っていなくても,バイク運転者の注意義務及びその違反の程度に影響を与えることはなく,ヘルメット装着の有無が事故の可能性を増加させることはないからです。

そのため,理論的には,ヘルメット未装着であることそれ自体によって,事故起因の過失を問うことはできず,実務上も,一般道でのバイク運転者のヘルメットの未装着ににつき,事故発生自体の過失を問う運用はなされていません(別冊判例タイムズNo.38【全訂5版】312頁同旨)。なお,高速道路の場合は,ヘルメットの不装着を重過失評価するとされています。

バイク運転者のヘルメット未着用の場合の過失認定

前記のとおり,一般道でのバイク運転者のヘルメットの未装着による事故発生についての過失を問う運用はなされていません。

もっとも,ヘルメット不装着による損害拡大については話が異なります。

ヘルメットの装着の有無により,バイク運転者の頭部に加わる衝撃の程度が大きく異なりますので,それに伴って損害賠償額も大きく異なってきます。

そのため,前記原則論を徹底すると,バイクの運転者がヘルメットを装着していなかったという偶然の事情によって,同車と衝突した車両の運転者の支払賠償額が大きく変化してしまうことになり,結論の妥当性が認められません

そこで,実務上,一般道でのバイク運転者のヘルメットの未装着の場合に,バイク運転者が頭部外傷の傷害を負うなどのヘルメット未装着が損害拡大に寄与していると考えられる場合には,「著しい過失」に準じて,バイク側に損害拡大を理由とする過失分の加算修正するという運用がなされています(別冊判例タイムズNo.38【全訂5版】312頁同旨)。

補足

なお,ヘルメットは,内閣府令で定められた基準に適合するものであることを要するとされていますが(道路交通法71条の4第7項),ハーフ型ヘルメットであっても,フルフェイス型ヘルメットであっても問題がないとされています。

この点については,ハーフ型ヘルメットを着用していた交通事故被害者に対し,頭部全体を保護するフルフェイス型ヘルメットを着用しなかったことによって損害を拡大させた過失があるか争われた事案があり,法律上,ハーフ型ヘルメットで十分であり,フルフェイス型ヘルメットである必要まではないと判示し,ハーフ型ヘルメット装着による過失認定を否定した裁判例があります(京都地判平成30年1月11日・自保ジャーナル2020号118頁)。

参考にしてください。



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