告訴と被害届の違いを簡単に説明します。

告訴と被害届の違いを知っていますか。

一見するとよく似たものであるかのように見えますが,法律的に見ると全く違うものです。以下,何が違うかについて説明します。

捜査の端緒

日本では,[捜査機関]が,何らかの犯罪があったらしいという疑いを持ったときに,捜査が始まります。

この捜査のとっかかりとなる「何らかの犯罪があったらしいというきっかけ」を捜査の端緒といいます。

捜査の端緒として代表的なものとしては,①[職務質問],②所持品検査,③現行犯逮捕,④検視,⑤自首,⑥告訴,⑦告発,⑧被害届,⑨通報,⑩警らなどがあり,捜査機関側で発見することもあれば,他からもたらされる場合もあります。

このうち,捜査機関外からもたらされる捜査の端緒として有名なのが告訴と被害届です。

告訴と被害届は,いずれも犯罪被害に遭ったと主張する人が,捜査機関に対して,犯罪事実等の告知をする行為なのですが,その法律的意味は全く異なります。

告訴と被害届

被害届とは

被害届とは,犯罪被害者が,捜査機関に対して犯罪事実を申告するために提出されるものです(告訴とは異なり,犯人の訴追を求める意思表示は含まれていません。)。

被害届は,刑事訴訟法に規定されたものではなく,そのために,被害届により捜査機関に対して何らかの義務が生じさせるものではありません。

そのため,被害届は,私人による任意の書面(警察官が聴取して書面化することもあります。)に過ぎず,被害届が提出されたとしても,捜査機関が捜査を開始するかどうかについては,捜査機関の判断によるとされています。

誤りを恐れずにわかりやすく言うと,被害届は,単に被害者(と称する者)が,捜査機関に対して,このような犯罪被害に遭いましたので,捜査をしてくださいというお願いにすぎず,これに特段の法的意味はありませんので,捜査機関としても,被害届を受理しても,捜査をするかしないか,するとしてどこまでするかの一切は,裁量の範囲内で自由に決定できるのです。

告訴とは

もっとも,告訴は,被害届とはまったく法的扱いが異なります。

告訴は,犯罪被害者その他の告訴権者(刑事訴訟法230条~234条)が,捜査機関に対して犯罪事実を申告した上で,犯人の訴追を求める意思表示です(犯罪事実の申告という意味では被害届と同様なのですが,犯人の訴追を求める意思表示が含まれているという点が被害届と異なります。)。

告訴については,告訴がなされた場合に発生する捜査機関の法的義務が,刑事訴訟法に詳細に規定されているのです(親告罪については,訴訟条件ともなります。)。

告訴そのものから直ちに捜査機関に対する捜査義務が生じるものではないのですが,告訴がなされると,司法警察員に対する事件の書類及び証拠物の検察官への送付義務(刑事訴訟法242条)が生じ,また検察官による起訴又は不起訴の場合の告訴人への処分通知義務(刑事訴訟法260条)・請求があった場合の不起訴理由の告知義務(刑事訴訟法261条)が生じますので,捜査機関としても,告訴がなされた事件について捜査することなく放置することが出来なくなりるという法的効果が生じます。

その結果として,告訴状の提出は,捜査機関に対して,告訴事実についての捜査をして,犯人を訴追するか否かを決定しなければならなくなるという事実上の義務が生じさせることとなるのです。

余談

告訴については,捜査機関に告訴受理義務が存在しているため,告訴状の提出があった場合,捜査機関はこれを拒否できないはずです。

もっとも,前記のとおり,犯罪被害に遭ったと主張する人が告訴状を提出し,これを司法警察員(実務上は警察署長)がこれを受理すると,警察段階で捜査終了とすることはできず,事件を検察官に送致し,検察官による起訴・不起訴についての終局処分を受けなければならない法的義務が生じ,警察のみならず検察にとっても,とても面倒くさいものなのです。

そのため,捜査機関は,これらの義務を回避するために,本来はこれを拒否することが出来ないにもかかわらず,告訴状の提出がなされそうになった場合,瀬戸際で全力で抵抗します。何とか思いとどまらせようとしてあの手この手を使って説得をして告訴状の提出ではなく被害届の提出にレベルダウンさせようとしたりしてきます(内容証明で送りつけても,送り返されてきたりします。)。

以上が,告訴と被害届の違いの概略です。疑問点があればお近くの弁護士にご相談ください。



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