無免許運転が交通事故損害賠償での過失割合にどのように影響するか(判例・裁判例の基本的な考え方について)

わが国には,「何人も,・・・公安委員会の運転免許を受けないで(・・・運転免許の効力が停止されている場合を含む。),自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」との法律があり(道交法64条1項),これに違反して,無免許運転をした場合,刑事上,1年以下の懲役又は30万円以下の刑事処分を科せられることとなります(道交法117条の4第2号)。なお,ここでいう無免許とは,運転訓練を経ない無免許に限られず,些細な交通違反を重ねて免許停止の処分を受けている者も含まれます。

では,無免許運転の場合,民事上は過失割合にいかなる影響を及ぼすのでしょうか。無免許運転の事実により,直ちに同運転者に不利益な過失修正がなされるのか問題となります。

無免許運転による民事上の責任(過失への影響)

前記のとおり,無免許運転は法律上禁止されていますが,無免許運転者に対して,無免許という一点の事実のみで,一律に不利な過失修正をすることについては,理論上の困難性を伴います。

なぜなら,一般に,運転訓練を経ない無免許運転者は運転技量が乏しいことが容易に想定できますが,前述のような些細な交通違反を積み重ねた結果免許停止の処分を受けている者については,必ずしも運転技量が乏しいわけではないからです(この点については,[ヘルメットをかぶっていないバイク運転者の場合の過失割合],[同乗者のシートベルト未装着・不着用の場合の過失割合],[酒気帯び運転の場合の過失割合]と同様の問題提起です。)。

そのため,理論的には,無免許運転であることそれ自体によって,直ちに運転技量に不足がある者といえるかを決することはできず,無免許運転であることから直ちに過失割合等に影響を及ぼす注意義務違反があると考えることはできないはずなのです(別冊判例タイムズNo.38【全訂5版】44頁同旨)。

無免許運転についての過失見解についての裁判例の趨勢

もっとも,実際の裁判例では,無免許運転の場合には,具体的な検討をせずに,10~20%修正した事例が多いと思われます。

おそらく,無免許運転の事実により,運転技量の不足を推認させるのみならず,仮に些細な交通違反を積み重ねた結果免許停止の処分を受けている者であっても交通法規を軽視する姿勢が認められることから,事故発生の危険性が一般の自動車運転手よりも高いとの考えにより,判断されているのでしょう。

以下,無免許運転の際の不利益修正事例を例示しますので,参考にしてください。

10%修正事案

① 名古屋地判平成19年10月16日・判タ1283号190頁(修正の程度は推定)

② 大阪地判平成25年3月27日・交民集46巻2号491頁(修正の程度は推定)

20%修正事案

① 千葉地判平成21年7月14日・交民集42巻4号876頁

②   神戸地判平成29年12月27日・自保ジャーナル2018号113頁

30%修正事例

① 大阪地判平成19年4月26日・交民集40巻2号567頁



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