共同不法行為者間の求償権の性質とその消滅時効期間について

複数の加害者の共同行為により被害者に損害を与えてしまった場合,共同不法行為者はどのような責任を負うかわかりますか。

また,共同不法行為者の1人が被害者に損害賠償をした場合,他方の共同不法行為者に対して行う求償権行使はどのようになるのでしょうか。

本稿では,共同不法行為者間の求償権について,その権利の性質と消滅時効についての考え方について説明します。

共同不法行為とは

共同不法行為者の責任

共同不法行為とは,複数の人間の関与により他人の権利侵害の結果を発生させる行為をいいます。

この点,共同不法行為は,同時共同不法行為(狭義の共同不法行為)と異時共同不法行為とが存在しますが,理屈はいずれも同じです。

同時共同不法行為(狭義の共同不法行為)一例を挙げると,上のイラストのように2台の自動車が衝突して一緒になって進行し,先にいた人にぶつかった場合等が考えられます。

この点,共同不法行為の成立要件については学説上の争いがありましたが,本稿で問題とする論点ではないため,これはスルーし,その効果から説明します。

共同不法行為が成立すると,共同不法行為者の責任は不真正連帯債務となり(最判昭和57年3月4日・判時1042号87頁),各共同不法行為者が「それぞれ」,被害者に対して,連帯して,被害者が被った損害「全額の」支払い責任を負います(民法719条1項)。

共同不法行為者間の間の求償権

この点,不真正連帯債務では連帯債務者間には負担部分がないため当然には生じないはずなのですが,判例は、不真正連帯債務でも共同不法行為者の一人が被害者に賠償した場合には、他の共同不法行為者の負担すべき過失割合(責任割合)に応じて求償できるとしています(最判昭和41年11月18日・民集20巻9号1886頁、最判平成10年9月10日・民集52巻6号1494頁)。

すなわち,上の図のとおり,加害者Aが被害者Cの損害を賠償した場合,支払った金額について,加害者Bの過失負担分について加害者Bから支払いを受けることができることとなります。

原債権の消滅時効期間満了「前」に共同不法行為者の1人が弁済した場合の共同不法行為者間の求償権の帰趨

では,被害者Cに支払いをした加害者Aは,いつまで加害者Bに対してその支払いを請求できるのでしょうか。

端的に言うと,共同不法行為者間の求償権は,どのような時効期間に服するのでしょうか。

この点,共同不法行為者間の求償権は,共同不法行為者間の公平の観点から認められた不当利得返還請求権の性質を有するものと考えられています。

そのため,共同不法行為者間の求償権は,共同不法行為者が当該不法行為によって損害を被った第三者の賠償をした日に発生し,この賠償日(加害者Aが被害者Cに支払いをした日)から10年間の消滅時効に服すると解釈されます(東京地判平成31年1月30日等)。

このように解釈しないと,時効期間が近づいてきた場合,加害者A・加害者Bがいずれも支払いを渋ることが考えられ,被害者Cの救済とならないからです。

原債権の消滅時効期間満了「後」に共同不法行為者の1人が弁済した場合の共同不法行為者間の求償権の帰趨

もっとも,被害者Cから加害者A及び加害者Bに対する損害賠償請求権が時効完成後のものであった場合には,事情が異なります。

この場合には,元々被害者Cの有する請求権が時効消滅していますので,加害者A・加害者Bともに被害者Cに対する損害賠償支払い義務を免れているはずです。

そのため,この場合,仮に加害者Aが,被害者Cに対して損害賠償をしたとしても,それは単に加害者Aが,時効の利益を放棄したものに過ぎず,かかる支払い行為により加害者Bの時効の利益(共同免責の効果)が失われるものではありません。

したがって,原債権(被害者Cの加害者A及び加害者Bに対する損害賠償請求権)が時効消滅した後は,加害者Aが被害者Cに対する支払いをしても加害者Aから加害者Bに対する求償権は発生しないこととなります。

このように解釈しても,原債権の主張をさぼっていた(権利の上に眠っていた)被害者Cの責任であり,特段被害者Cに不利益な結論となるものではないため,妥当な考え方といえます。

参考にして下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です