給与振込先銀行口座への預金債権差押命令申立ては給与支払日の何日前にすべきか?

振込された給与を狙った預金債権の差押えは,執行裁判所のなす債権差押命令に基づく金銭執行であり(民事執行法143条,145条),差押え→換価→交付・配当という流れで実行されます。

そして,預金債権の差押えは,債権差押命令申立書を裁判所に提出することにより始まり(民事執行法2条,同規則1条),差押えの効力は,差押命令が第三債務者(預金債権差押えの場合は銀行)に送達されたときに生じるとされています(民事執行法145条5項)。

そこで,給与支払日(毎月25日であることが多い)を狙って預金債権を差押えるためには,タイミングを合わせて債権差押命令申立てをしなければなりません。

では,具体的にどのタイミングで申し立てをすればいいのでしょうか。

以下,債権差押命令申立書提出のタイミングと,なぜそのようなタイミングになるのかについて,簡単に説明したいと思います。 “給与振込先銀行口座への預金債権差押命令申立ては給与支払日の何日前にすべきか?” の続きを読む

車両を盗まれた・だまし取られた・乗り逃げされた場合に車両保険金は支払われるか

保有している自動車が盗難被害に遭ったり,他人に騙し取られたり,貸していた相手に持ち逃げされたりすることがあり得ます。

いずれかの方法によって保有車両を他人に奪い取られた場合には,その簒奪者に対して損害賠償請求できるのは当然です。

では,これに加えて,保有車両に付保していた保険会社に対し,当該車両時価相当額についての車両保険金を請求できるでしょうか。 “車両を盗まれた・だまし取られた・乗り逃げされた場合に車両保険金は支払われるか” の続きを読む

路肩と路側帯の違いとそれぞれの通行ルール・駐車ルール

路肩と路側帯の違いがわかりますか。

一見すると同じように感じられるかもしれませんが、法律的には全く別の規制に服しています。

路肩の中で,道路標示によって区画された「歩道が設けられていない道路または歩道と接していない側の道路」の路端の帯状のスペースを特に路側帯といい(道路交通法2条1項3号の4)、路肩は車道として扱われるのですが,路側帯は歩道として扱われるのでその意味は全く異なります。

本稿では,この紛らわしい路肩と路側帯の違いについて説明します。 “路肩と路側帯の違いとそれぞれの通行ルール・駐車ルール” の続きを読む

道路直進車と路外からの道路右折進入車の交通事故の場合の右折進入車の「右折進入の程度に応じた」基本的過失割合の変化

道路外に存する車両が,道路外から道路に右折進入しようとした際に交通事故が発生することはよくあります。

この道路右折進入車と道路上直進走行していた車両との注意義務と基本的過失割合については,別稿の道路進入車の道路交通法上の注意義務と交通事故の場合の過失割合にて説明したとおりです。

もっとも,道路右折進入車両の道路進入の程度により,その基本的過失割合は変わってくるため,本稿では,別稿を一歩進めて,右折進入車両の右折進入の程度によって基本的過失割合がどのように変化するのかについて説明したいと思います。 “道路直進車と路外からの道路右折進入車の交通事故の場合の右折進入車の「右折進入の程度に応じた」基本的過失割合の変化” の続きを読む

【投資信託の差押え】債権者が債務者を委託者とする投資信託を換価する方法

債務者が投資信託をしている場合,債務者に対して債権を有する債権者は当該投資信託を差押えて,そこから債権回収をしたいと考えるのが一般的です。

もっとも,法律上,債務者が投資信託をしていたとしても信託財産自体の差押えはできません(信託法23条1項)。

では,どのようにこれを実行化するかというと,投資信託の場合には,債務者(兼受益者)となりますので信託受益権を差押えることとなります。

本稿では,なぜこのような結論となるのかについて簡単に説明した上,実務上問題となる点をいくつか解説していきます。

なお,投資信託受益権の差押えについては,実際には数々の論点があるのですが,本稿は,強制執行手続きに必要な範囲で簡単に説明するため,極力法的論点は割愛し,事実関係も証券会社等が販売する一般的な投資信託に特化して簡潔化した入門編として説明します。そこで,本稿で紹介できなかった点や疑問点は,ご自身で基本書を読まれるか,お近くの弁護士に相談して下さい。 “【投資信託の差押え】債権者が債務者を委託者とする投資信託を換価する方法” の続きを読む

外国人が日本で交通事故に遭った場合の準拠法と裁判管轄

特別永住者・中長期在留者を始め,観光客なども含めると,日本には多くの外国人の方が居住・滞在しておられます。

居住・滞在されている外国人の方も,日本にいる以上,一定の確率で交通事故に遭う可能性があります。

では,外国人の方が日本で交通事故に遭った場合,どこの法律が適用され,紛争が発展した場合にはどこの裁判所で審理されるのでしょうか。

結論から先に言うと,原則として日本の法律が適用され日本の裁判所で審理されるのですが,いずれも例外があります。

そこで,以下,外国人が日本で交通事故を起こした場合の準拠法と裁判管轄について,その根拠を踏まえて簡単に説明します。 “外国人が日本で交通事故に遭った場合の準拠法と裁判管轄” の続きを読む

【裁判文書表記の基本ルール】裁判所に提出する文書の様式・書き方の基礎

裁判所が作成する文書には様々なルールがあります。

これらのルールはあくまでも裁判所のルールですので,弁護士や一般の方が裁判所に提出する書面をこのルールに従って作成する必要はありません。

もっとも,裁判官がこのルールで文書を作成するため,このルールと異なる書き方で書面を作ると読み手の裁判官に違和感とストレスを感じさせることとなるため,わずかな不利益を受けうることとなります。

そのため,通常の能力をもった弁護士は,この裁判所ルール(公用文作成ルール)に乗っ取って文書を作成します。

以下,裁判文書作成のルールのうち,基本的なものを抽出して紹介したいと思います。 “【裁判文書表記の基本ルール】裁判所に提出する文書の様式・書き方の基礎” の続きを読む

【交通事故によるむち打ち】外傷による頚部損傷まとめ

交通事故においては,明らかな骨折や脱臼を伴わない頚椎支持軟部組織(靭帯,筋肉,椎間板等)の損傷を主体とするむち打ち所見が頻発し,多くの場合これが原因となって当事者間で紛争となります。

そこで,以下,交通事故処理専門弁護士が,交通事故におけるむち打ち損傷事案処理に必要な限度での最低限の頚部損傷についての概略説明をしますので,交渉の前提としていただければ幸いです(なお,厳密な意味での医学的見解と異なる場合があることを前提としていただきたい。)。

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修理工場は交通事故車両をレッカー移動させるとレッカー代を請求できるのか

交通事故に遭った際に,修理工場がレッカー車を手配して自分の修理工場に運び,その費用としてレッカー代を請求してくることがあります(法的には,修理工場から被害車両使用所有者に対する請求権のはずですが,実際には加害者又は加害車両付保保険会社に対して直接請求してくることがほとんどです。)。

レッカー移動の必要性があり,かつ当該修理工場が一般貨物自動車運送業の許可(緑ナンバー)を持っていれば問題ないのですが,修理工場が許可を持っていない(白ナンバー)の場合も多く,この場合には支払いの要否が問題となります。 “修理工場は交通事故車両をレッカー移動させるとレッカー代を請求できるのか” の続きを読む